Cresset - Flare™ V4リリース : 高速で賢いFEP、新しい力場、MD解析ツールの改良

Flare™ V4リリース : 高速で賢いFEP、新しい力場、MD解析ツールの改良





Giovanna Tedesco

2020/5/27





Cressetは去る5月に、Flare(SBDDソリューション)の新しいバージョンをリリースいたしました。Flare V4では、自由エネルギー摂動 (FEP)、MDのベースとなる力場、MD解析機能を主としてそのGUIとともに大幅な改善がなされました。

FEP計算: 自動化と高速化


 近年FEPが多くの場面で活用されます。類似する化合物シリーズでターゲット蛋白に対する相対結合自由エネルギーの差を計算し、化合物の活性を高い精度で予測することができるからです。しかしながら従来、FEP計算は高価なGPUリソースを長時間占有する高度な計算手法であったため、残念ながら簡便な方法とは考えられていません。

 弊社では、当初から使いやすいFEPを目指し、前バージョンのFlare V3に初めてFEP計算機能を搭載し、標準的なデータセットで高い予測精度を確認し報告しています(Assessment of Binding Affinity via Alchemical Free Energy Calculations, J. Chem. Inf. Model. 2020)。本リリースではその複雑な計算過程を一層高速化することを目標としてきました。同時に、目的に応じた型の異なる摂動ネットワークと計算モードを用意し、ユーザーが計算時間と精度とのバランスを図ることができるようになりました。

 高精度の計算においては、双方向かつ密なリガンドネットワーク(図1)を解析することになります。Flareは3つ以上のリガンド間の巡回経路を自動生成します。ネットワーク構造は密で冗長となりますが、双方向リンクと巡回経路内の累積誤差を調べることにより、全体的に一貫した予測値ネットワークが構築され、必要であればネットワークを再構成することができます。

 さらに、新たに追加された「Production」モードでは、活性値を予測しようとするリガンドが、実測値をもつノードから遠くにならないよう合理的なネットワークを自動構成します。結合親和性の予測と誤差計算のアルゴリズムが精度・速度ともに改善されただけでなく、すでに実測値をもつ化合物間のリンクの計算は省略され、効率化が図られます。



図1. 高精度の計算を可能とするネットワーク

(「Production」モードでは実測値のある分子同士をつなぐリンクについては計算回避)


 一方、リード化合物最適化プロジェクトでは、化合物の修飾と活性の変化を予測します。そのためには、「星」型グラフネットワーク(図2)を利用します。このネットワークでは、親化合物をネットワークの中心に置き、各テスト化合物はそれぞれ放射状のリンクの先に配置されます。ネットワーク全体が少ないリンク数で構成されるため、計算時間を大幅に減らすことができます。

 どちらの型のネットワークにおいても「quick」モードを選択可能で、各リンクを一方向のみ計算し、計算時間をさらに半減することできます。



図2. 中心に置くリード化合物の最適化(「星型」ネットワーク)


Flare V4のFEP計算はアルゴリズムの改良により約20%高速化され、さらに必要な数だけ並列化されます。一つのリンク内のλ-窓の変換段ごとに個別のGPUで計算され、終了後結果を収集し一つにマージします。これによって、10GPUからなる小規模クラスター(例えばAWS g4dn.xlarge、Tesla T4スポットインスタンス)であれば、中程度の蛋白質上でのシミュレーションにおいて、一つの変換を2時間足らずで計算することができます。GPU数に応じて短時間で多くの化合物の予測が可能となります。

 経済的コストも大幅に抑えることができます。弊社のFEPの実装は、ゲーミング用(例えばGTX1080やGTX2080)程度のGPUでも、低コストのAmazonスポットインスタンスでも動作します。さらに、Cresset Engine Brokerを利用することで、インハウスのGPUクラスターとオンデマンドのAWSクラスターをハイブリッドにシームレスな計算資源としての構成も可能となります。

FEPとMDのための新しい改善された力場


FEP計算やMD計算では、低分子リガンドの力場パラメータの精度が重要な鍵となります。

 今回のリリースでは、ユーザーが選択できる力場にOpen force fieldが加わりました。Open FFコンソーシアムが頻繁にアップデートする提供ファイルを所定のフォルダーにコピーするだけで、Flareの中で使える力場がアップデートされます。

 低分子にAMBER/GAFF2またはAMBER/GAFFを適用する場合、新しく備わったカスタム力場ウィザードを活用してパラメータを改善することができます。ユーザーフレンドリーなGUI上で、トーションを選択するとそのトーションに関わる部分フラグメント(図3左)が切り取られ、選択された基底関数(図3右)に基づいてpsi4によるQM計算を行い、力場パラメータを自動生成します。またその結果をビジュアルで効果的に確認することができます。

 この部分構造に特化してカスタマイズされた力場パラメータ(図4)はローカルに保存され、FEPやMD計算の中で一貫して利用されます。



図3. カスタム力場ウィザードによるAMBER/GAFF2とAMBER/GAFFパラメータの作成



図4. カスタム力場エクスプローラー


MD解析ツール


FlareではOpenMMによる動力学的シミュレーションを行い、蛋白のコンフォメーションの変動や蛋白-リガンド複合体の安定性を見ることができます。Flare V4では、先に紹介した改良された力場を利用できるだけでなく、そのシミュレーションの結果を新しい可視化ツールを通して見ることができます。例えば、ポテンシャルエネルギー、温度、ボックスボリュームや密度などのシステムプロパティを選択し、プロットを対話的に操作することができます。また、シミュレーション中の興味ある相互作用を統計的に解析(図5左上)したり、3Dウィンドーの中から特定の距離・結合角・二面角を指定し、その時間プロットを見ることができます(図5右)。



図5. MDシミュレーションのための新しいビジュアル解析ツール

創薬化学や計算化学に便利な幾多の機能追加や改良


 他にもユーザーの要望で追加された多くの新機能があります。

· 蛋白の構造の潜在的問題を事前にチェックする機能

  • リガンドの構造を固定したまま蛋白側の構造を残基単位で修正する機能

  • 複数のリガンドを同時に最適化する機能

  • ドッキングの際に条件として付する制約の取り扱いの改善

  • 改善されたGUI:     

     ・蛋白の表面をメッシュで表示

     ・リガンドと蛋白をXEDパーシャルチャージで色付け

     ・リガンドをExportする際に蛋白構造も添付する

     ・シーケンス表示と3D描画ウィンドー内の色付けをマッチさせる

今後とも継続的にご要望をお聞かせいただければと思っております。

柔軟なライセンシングやエバリュエーション


 計算化学・創薬化学をご担当の方々、またはアカデミックの研究者にマッチするいくつものライセンシング・オプションを用意しております。Flareをお試しになりたい方は、ぜひ評価ライセンスをご要望ください。



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Cresset JP news release Flare V4 June 20
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